montokokoroの日記

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「君たちはどう生きるか」感想

ジブリの「君たちはどう生きるか」を見てきたので、その感想。

以下ネタバレなので本当に注意。ジブリが一切情報を告知せずの公開なので、作品を見るつもりの人はその意図をくみ取って、こんな素人のブログなんて見ずに映画館で全てを見て欲しい。今時作品の情報を全て封じて、自分で見るしかないっていう状況は贅沢だと思うので、その体験を映画館で、自分の体でして欲しい。

私もTwitterとかで他人の感想やネタバレが溢れる前に自分で見てしまおうと公開初日に見に行った。

このブログは自分が見て感じたものを一時保存するための自己満足だ。

 

見るまでに思ったこと。

まず、宮崎駿が監督をつとめる作品は風立ちぬで最後だと思っていたので、普通に嬉しい。高齢だし、前作で引退宣言をしてたので、よくやったなと思う。ジブリオタクはかなり深いところまでいるが、私はかなりライトな層だ。ほとんどの作品は夏に金曜ロードショーで見た程度だ。それでも子供のころから知っているアニメ監督の新作なので、それが見られることは嬉しい。一方で見る前から不安でもあった。告知が全然されないので大まかなストーリーどころか、時代、場所、主人公さえ分からないという状況で、全ては映画館で見るしかなかった。見る前に分かっていたことはタイトルと、ポスターの鳥みたいな動物だけ。

今の時代にそこまで情報を制限して公開するのはすごい。チケットを買った後にシアターの売店をのぞくとグッズが何点か置いてあった。ポスターやキーホルダーなど。それらも全てあのポスターのイラストしか使われてなかったのは笑った。また、公式パンフレットは公開後数日してから販売されるらしく、公開当日には置いてなかった。ここまでの徹底ぶりは恐ろしさすら感じた。

相当覚悟を決めて見ることを客に要求してくる作品だなと思った。本来、ほとんどの作品はそうであるべきかもしれないが。

 

以下、本編を見ての感想。

いろんなことを感じたが、大きいのは疲れとくやしさだった。

まず、疲れた。とても疲れた。情報が多い。場面転換も多い。おまえは誰だ?そこはどこだ?それは何だ?そういった疑問が尽きず、説明されずに容赦なく次にいく。一方でくどいくらい言葉で表す部分もあり、それらが相まって分かるようで分からない。覚悟を決め、出来るだけ多くのものを吸収しようと意気込んで席に座ったが、その覚悟をあざ笑うように色んな物が降ってきて、こちらの理解が及ぶ前にどこかへ飛んでいった。全てが何かの暗喩のようで、それが何なのかよく分からない。

 

次に悔しかった。何に対してかよく分からないが、この感情を一言で表すと悔しさだと思う。作品のほとんどを理解できない自分への悔しさ。何か、すごいことが起きている気がするけど、それが何なのか分からない。また、宮崎駿への怒りもある。あのジジイ、自分が言いたいこと好き勝手に早口で言い切って、ろくに説明もせずにどっかに行きやがった。ぽかーんとした顔で映画館を後にしながら、宮崎駿の意地悪な笑顔が見えるようだった。お前には少し難しかったか?まあ、そうだろうなあ。もうちょっと勉強して出直してこい。俺はいつでもここにいるから。そう言われたような気がした。堂々と自分のやりたいことをやってのけた。さすがだ。悪く言ってしまえば簡単だ。「観客を置き去りにしている」。使い古された、それでも的確な一言で済ませされる映画でもある。

あれだけの物をインスピレーションや一方的な思いだけで出来る訳が無い。設定や人物の関係など、多くのものがあるはずだ。そしてそれがよく見れば分かるように表現されていたはずだ。実際、さりげない部分で気付いたこともある。それでもほとんどのことが分からない。結局よく分からなかった。それだけだと駄作なんだけど、そうとは思えなかった。何かの予感を感じさせながらそれがよく分からない。

作品全体を通して、強いメッセージがあった。それが一番強く出てきたのは最後のやり取りの部分だ。彼の遺言、あるいは生前葬。勝手に世代交代を告げられ、世界をどうするか任された気分だ。理想や人の善性だけで、世界を構築できるのか。それらだけで積み上げられた世界はひどくもろいものではないか。しかし、悪意は簡単に広がり世界を燃やしてしまう。なら、理想の世界とは何だろうか。悪意を見抜き理解しながら、善で世界を構築する。死の匂いが溢れている主人公の眞人。彼は子供らしく純粋で潔癖だが、強い義務感も持っているようだ。そんな彼にしか作れない世界の部分があるらしい。一方で、それは誰もがいずれは忘れてしまうことで、それを気をやむ必要はないのかもしれない。

最後に積み木が崩れ、塔も倒壊した。それは別の時代と繋がっていた世界が断絶されたとも取れる。歴史の繋がりが絶たれてしまったのか、別の塔が別の場所に現れたのか、それは分からない。しかし、わざわざ最後のシーンを描いた。終戦から2年後、疎開先から東京に帰るための引っ越しのシーン。すっかり片づけられた部屋の中で眞人がポケットの中の何かを確認する。そこにはまだあれが残っているのだろう。

 

かなり抽象的な感想しか出てこない。細かい場面を見ると、やはりジブリのアニメだなって感じだった。動物の群れや群衆の描き方がすごい。大量の似たものが同時に動くシーンなんかも他のアニメとは比べものにならない。青鷺が徐々に憎たらしい姿に変わる場面や、おとなしく平和な世界が一変して荒々しくなるシーンなども素晴らしい。

また、他のジブリ作品に似た動きや構図も多かった気がする。あ、このシーンあれに似ているな、この視点の描き方ってあの作品でもあったな。そう思える場面が多かった。基の映像が膨大にあるから、自然と似たのかもしれない。セルフオマージュで似せにいったのかもしれない。まあ、どちらでもいい。アニメーションとしても面白い作品だった。

 

もう一回見に行こうと思う。それでもよく分からないと思うけど。特に理解できなかったのは2人の母のことだ。彼女らはあそこで何をしていたのか。眞人にどうして欲しかったのか。その辺りに注意してもう一度見たい。

 

終わり。