montokokoroの日記

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2022年に読んで良かった本10冊 後編

前回の続き。

2022年に読んで良かった本を10冊選んでツイートした本の紹介というか感想です。せっかくブログ作ったので。

これがそのツイート

前回書いたのは「そこのみにて光輝く」「草枕」「何者」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」「臨床の砦」の5つ。どれも傑作でした。今回は残りの5冊。全部SFです。今回も内容に言及するので、どうぞ。

 

1,星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン

骨太SF。大体どのSF小説ランキングでも入ってるやばいやつ。これが作者のデビュー作というのがすごすぎる。

SFというルールでミステリーを構築した小説。謎が解明されてさらなる謎が発生するが、その過程は少しずつ真相に近づいていく。この謎ってこういうことだったのか、ん?じゃあなんでそもそもこんなことが起こったの?みたいな。ミステリーと言えるが冴えた探偵が観察眼と頭の回転で犯人を特定するようなスタイリッシュなものではない。発見、仮定、反論、暫定的決定を繰り返して論理を慎重に積み重ねていく進み方そのものが科学であり、サイエンスフィクション。

1977年に出版されたらしく、人物への踏み込みは一切ないところが現代と違う。今の小説ならもっと主人公や周囲の人間の心理や関係性を描くがそれがない。

300ページほどで最後に到達したハントの衝撃の事実に、追い打ちをかけるダンチェッカーの理論。この2つに到達するための長い推理の道筋がこの小説だった。そこからさらのエピローグで忘れてたコリエルの存在に言及されたことで三重の衝撃に襲われた。

続編が手元にあるので読みたいが、かなり忘れてる部分があるのでためらってる。そうこうしているうちにもっと忘れていくんだけどなあ。

 

2,一九八四年/ジョージ・オーウェル

これまた超有名SF作品。

2022年にネットフリックスで公開された「攻殻機動隊2045」は、この作品がキーになっており、そのために読んだ。アニメでは二重思考などのワードもなんの説明もなく出てくるので、先に読んでて良かった。スタンドアローンコンプレックスでもサリンジャーライ麦畑で捕まえてがキーになってた。今回は事前に一九八四を読んだけど、それでも攻殻機動隊は分かりづらい。半分も分かってない。でもかっこいいので見てしまう。

一九八四年は結果なにも起こらなかった小説かもしれない。だって主人公は体制に対して革命を達成したわけでも一矢報いたわけでもない。ただただ目を付けられて、捕まって、再教育されて、体制の一員になった。それだけ。

 

3,アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス

またまた有名どころのSF。

地の文が主人公の知能と連動するという仕組みが面白い。主人公のチャーリィは生まれつき頭が悪く、幼児なみの知能しかない。彼は頭の良くなる手術の被験者となり、その手術の経過報告としてチャーリィが書いたものがこの小説で、彼の日記である。最初はひらがなばかりで書き間違いも多いが、手術後はすぐに一般人を追い越す知能を手に入れ、普通の文になる。そこからまた頭が良くなる。なりすぎる。人類で彼と対等に学問や研究の話が出来る人がいなくなるほどに頭が良くなって、結果人間関係に問題が生じる。その過程がいやらしい。手術前にはあれほど望んでいた知能を、いざ手にすると周囲と馴染めない。

術後の副作用として、彼の知能は低下を始める。その副作用を発見したのも彼。でも知能が低かった時と同じ生活に戻るわけではなく、色々あった人間関係や彼の考えの変化で、最後には何も残らない。かなり空しい小説だった。奪うなら与えるな。

 

4,日本SFの臨界点[怪奇篇]/伴名錬(編者)

これはアンソロジーで伴名錬は編者。伴名錬もSF作家だが、自分の作品は入っていない。

集められた短編に共通するテーマはSFってことぐらい。書かれた時代、作者、文体、扱うテーマ全部ばらばらの11のSF短編。だからこそ小説って本当に自由だなと思った。一つ一つかなり面白いし、それが1つの本にまとめられていることでSF小説という分野の奥の深さを感じた。個人的に好きな短編は中島らもの「DECO-CHIN」、田中哲弥の「大阪ヌル計画」、石黒達昌の「雪女」。「DECO-CHIN」は冒瀆的で最高。「大阪ヌル計画」と「雪女」は地の文が対極で、違った面白さがあった。もちろん扱うテーマとアイデアも良いし、どちらもオチの付け方が秀逸だった。あと、「ちまみれ家族」を表題に置いたのは、編者の性格が悪いとしか思えない。

 

5,タイタンの妖女/カート・ヴォネガット・ジュニア

最後も有名SF。2022年に読んだ本で一番印象に残っているのはこの本かもしれない。けど、一番語るのが難しいので、読んでくれと言うことしか出来ない。難しい文章ではない。翻訳特有の引っかかる印象はあるが、読みづらいと言うほどでは無かった気がする。

不条理な話とも言えるが、そんなちんけなことでもない。読んだ後の読後感が、他の本で味わったどの感じとも違う。「アルジャーノンに花束を」では空しさや寂しさがあったがそれに近い。けど違うんだよなあ。これ、伝わってないよな。自分でも分からないし。

450ページの作品で、300ページくらいはつまらない。つまらないというか、何の話をしているのかが分からない。ちぐはぐ。それらが最後にまとまる訳ではないが、1つの話になる。伏線が回収されるところもあるけど、そういうことにカタルシスを感じる話でもない。

結局何の話なのか、書けば書くほど分からなくなってきた。大河ドラマとか連続テレビ小説を見たことないけど、全話リアタイ視聴したらこんな感じなのかなあ。分からん。自分で分かってない物を他の分かってないもので例えようとしたのでより混乱した。

解説の一人は爆笑問題太田光で、かなり良いことを書いてる。彼の芸能事務所タイタンはこの小説から名を取っているらしい。

 

以上、2022年に読んで良かった本10冊、後半の5つでした。この5つは2022年の前の方で読んだと思うので、記憶してない部分が多々あった。前回よりかなり文量が落ちてるのは多分そのせい。まあ、読書って得られる知識とかはそんなにない。賢くなりたかったら、勉強したり、本でも教養のための本を読んだり、人と話した方が良い。読書家は賢いみたいなイメージはお互いにとって良くない。読書家でも馬鹿はいるし、賢くないと本を読めないと思っている人がいたら損だと思う。賢い人が本をいっぱい読んでるのも1つの事実だけど、それさえもやっぱり一部だと思う。

あと、勝手に10冊選んだ感想としては、自分は読んだ後に物語全体を通して得た印象というか、こういう物語だったなあって感じるところを重視しているかもしれない。単純に記憶力が良くないので、細かい出来事を覚えてないだけかもしれないけど。

 

2023年も面白い本をたくさん読みたい。そんなことを思いながら、既に今年が1週間経ってる事実が恐ろしい。時っていうやつは残酷だよ。

終わり。